2019-05-15

CI VI BI ブランディング、それぞれの解釈

色々と思うところがありまして“ブランディング”という言葉を7〜8年程前から極力用いないようにしています。その代替として、現時点では「ブランド・デザイン」という表現に落ち着いています。“ブランディング”が物事の体裁を感じ良く整えたり、受け取る側に対し実力や実体以上に評価されるための“演出上のテクニック”という訴求や解釈が拡がっていたことに危機感を覚え、弊社の取り組みが「これらと同一視されることを避けたい」と考えたからです。本来、ブランディングは緻密で大胆なアーキテクチャであり、構想や設計、構築、運用を現実的に統合した固有の事業戦略と戦術、体系的なコミュニケーションです。経営や事業が持続性を獲得するために、戦略とクリエイティブを駆使した強力な手法なのです。もちろん先述の“体裁を感じよく整える”ことや“演出上のテクニック”は要素として含まれることもありますが、あくまでもブランディングを構成する部分や表層の要素であり、ドレッシングです。

※本稿では、あえて「ブランディング」という表現で一貫します。

CIについて / Corporate Identity

CIは[Corporate Identity]の頭文字ですが、これにもまた様々な言説があり、分かりにくさの一因になっているようです。CIすなわち会社のロゴマークと理解している方も少なからずいらっしゃいます。半世紀以上前に米国から輸入された概念ですので、現在に合わせた翻訳や解釈も必要でしょう。まず会社の根幹となる価値観や考え方、存在意義(なぜ、何のために在るのか)、美意識、何を持って何に寄与するのかを言語化することです。ここで綴られる言葉はひとつひとつ辛抱強く定義される必要があります。美しい言い回しよりも実直さを評価します。第1に会社の構成員が共鳴するメッセージであること、同時に顧客や社会からも共感される表明であることは必須です。一昔前はどちらかと言えば会社の理想像の表現に比重があったように思われますが、現代では混じり気のない徹底した態度か、あるいは社会の共感から逆引きしたもの、いずれであっても勇気ある明快さが支持される傾向にあるようです。空疎なメッセージとなることは忌避しなければなりません。CIは会社の事業活動の全てを包含する最上位概念(もちろん経営者の上)となり、その血脈から事業戦略やネーミング、スローガン、商品開発、行動規範、様々な営業施策が創造されるものです。CIが命の宿ったメッセージとなるなら、これに続くVIやBI、ブランディングも自ずと力強いものになるでしょう。一応のフォーマットや導き方のメソッドは存在しますが、そもそも固有の存在が発する固有のメッセージに“型”など必要在りません。構成員の“共鳴”と社会の“共感”がうまく重なり合うポイントを洞察しオリジナリティある飾らない言葉を妥協なく獲得しましょう。

VIについて / Visual Identity

Visual Identityも単にシンボルマークやロゴタイプ(いわゆるロゴ)を指す言葉ではありません。VIはCIに含まれるのか、あるいはVIの球体の核にCIがあるのか、CIとVIは両輪なのか、事業の性質やコミュニケーションの目的によっても情報構造上の配置は異なる判断となるはずです。CI VIの伝統的な蓄積に敬意を表しつつこれを分解し新たにキュレーションする視点や感性が必要です。現代から次代に於いて「必ずこうあるべき」と言ったパラダイムから放たれ、デザイン思考で捉え直しましょう。基本的にCIが言葉でありコンセプトであるならば、VIはこのエッセンスをビジュアルとして構造的・立体的に整備します。言葉やコンセプト、さらには事業戦略をビジュアル・コミュニケーションとして体系的なシステムへと変換、シンボリックに、そして直感的に内外コミュニケーションを担います。シンボルマークやロゴタイプはもちろん、規定書体やカラー展開、フォトディレクション、レイアウト、メディアやアプリケーションツール、全体のトーン&マナー、レギュレーション、これらを適切に運用するマネジメントの観点から整備される事が望ましい姿です。VIやユーザー体験からCIが抽出されることも現代に鑑みれば“アリ”ですね。

BIについて / brand Identity

一般的に特定のブランドを前線に置く、あるいはブランドのラインナップ展開を事業とする場合、会社やホールディングスの存在は保有ブランドの存在感を薄めないよう黒子として機動することが多く見られます。この場合、基本的にCI VIの施策を統合し当該ブランドに最適化したものと考えて問題ありません。また、サービスやプロダクト、ショップ、チェーンシステムといった顧客や消費者と直接コミュニケーションを図るブランドがそのまま会社名である場合とそうでない場合とではブランドと事業主体との役割や関係性が異なり、これは設計や情報構造、運用に反映されます。BIの特徴としては、ブランド全体が及ぼすユーザー体験への洞察から、より顧客や社会とのコミュニケーションの深化を重視し好感や支持を獲得する手法を採ります。CI VIをより空間的に展開し“ブランドが社会の中で理想的な自律を図るためのマネジメント・システム”と解釈すべきでしょう。ブランド・コミュニケーションを重視する一方、ブランドのポジショニングやブランドの実体を強化する戦略もVIに注入されます。

ブランディングについて

一般的に“ブランド”という言葉を用いる時に生じる齟齬は、以下の2つの意味が混在しているからです。

A【ブランド】→ 固有の識別記号 ( 商標 )

B【ブランド】→ 唯一の存在価値が“結ばれるべき人々”や社会層に高く評価され、その結果、さらに選ばれ続けるモノやコト、体験があり、ブランドとブランドを選ぶ人との相互作用がブランドを醸成。 それが当該ブランドに対し、信頼や愛着、忠誠、希望、応援、アイデンティティ等の形で 当該ブランドと結ばれた人の心情に根付いた一定のパターンを示すようになる。 この拡大・深化・確立・社会的影響力の度合いをブランド力などと表現する。
つまり、Aを認識し評価する人の中に発露したBが“ブランディングに成功したブランド”と言える。

ブランディングという言葉は現在進行形であることからも、「ブランドとなるため、そして、ブランドで在り続けるための持続的な活動」です。これまでブランディング自体はあくまで有効なマーケティング手法のひとつという理解が一般的でした。しかしブランディングは従前の枠組みを飲み込み、事業戦略と行動が一体化したもの、あるいは事業活動と不可分のものという解釈が生まれています。つまり事業活動の全てはブランディングの観点から運用されるべきという考え方です。一見すると素朴なアイデアのようですが実は重大な分水嶺だと思います。なぜならこの過剰な時代性の中でブランディングの教科書にあるような「らしさを表現する事」程度では事業のスピードやダイナミズムに欠けるからです。実体とコミュニケーション、戦略とクリエイティブを四輪駆動し、顧客や社会からの支持を獲得し続け、事業の持続確率を高めることがORIGAMIのブランディングの要諦です。進め方をご覧ください。

 

追記:

本稿では一般的に流通しているブランド論やブランディングのプレゼンテーションを踏襲した上で、さらに野心的な視点を展開しています。唯一の正解など存在しませんが次代に向けてブランディングの在り方も柔軟に変化する必要があり、ビジネス書にあるようなメソッドに囚われていてはブランディングが機能不全に陥ってしまうと危惧しています。客観性の最大範囲が即ち主観である以上、また誰しもが見たいものを見たいように見てしまう以上、他者の視点、外側の視点、想定外の視点をいかに調達するかは経営や事業にとって普遍的で重要な喫緊の課題です。

 

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